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一般社団法人 大学監査協会 2021年度事業計画

大学が社会の公器として、教育研究の質を担保し、社会へ貢献していくためには「大学法人の経営の体質改善を通じた質の向上」及び「大学運営の質の向上」に必要なガバナンス強化と意思決定プロセスの透明性の向上が求められる。当協会は、設立の趣旨を踏まえ、監査を通して大学価値向上に資するべく、下記を基本方針として事業を計画する。

  1. 「大学監査は、大学法人の価値向上のために存在する」という基本理念のもと、大学における監査概念の確立と大学法人への啓蒙活動を行う。
  2. 大学業務の中心をなす大学監査並びに関連諸分野についての理論及び実務へ展開するための監査基準の確立と啓蒙活動を行う。中でも大学の教育の質的管理体制に関する教学監査については、そのガバナンス・マネジメント体制について評価する視点を明確にし、実務へ展開していく。
  3. 監事・内部監査人の専門的能力の向上及び監査の質と実効性の向上、並びに会計監査人との三者間の情報共有化等の交流促進を図るため三様監査の位置づけを明確にする。
  4. 大学運営全般並びに監査に関する情報収集・調査研究を行うとともに、政策提言できる組織体制を構築するとともに、インタラクティブな情報提供体制を充実させる。
  5. 大学監査概念啓蒙活動のためのコミュニケーションルート拡大を行う。

上記の基本方針を踏まえ、下記の2課題(中長期事業目標)に取り組む。その際、その社会的責任を果たすこと、及び大学の価値向上のために大学監査が存在するという意義を自覚するとともに、大学監査は、大学法人という組織の特性を踏まえ、従来の監査概念にとらわれない考え方を前提に、今までの研究の成果をさらに発展させて2021年度の事業計画を推進することとする。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、学校教育における授業形態・企業研修・各種会議がオンラインによる方式が採用される等、社会活動の方法の見直しが求められる状況にある。そこで、当協会もオンラインによる各種会議の開催について本年度の試行結果等を踏まて、より積極的に採用していくこととする。特に、研究会議については、教育効果・サイバーセキュリティ・著作権・通信環境・コンピュータスキル等、様々な問題が存在する。しかし、一方で、研究会議開催地から遠距離にある会員校にとっては、経営資源の有効活用に寄与できることから、本年度試行したオンラインと対面方式を組み合わせたハイブリッド方式の開催については、講演者並びに当協会の権利保護を確立させたうえで開催方式の中心とすることとする。

Ⅰ.大学経営の質向上に寄与する監査概念・監査体系と監査手法の確立と啓蒙普及

Ⅱ.大学監査手法の実務への適用と研修機能の充実

Ⅰ.大学経営の質向上に寄与する監査概念と監査手法の確立と啓蒙普及

監査は、組織活動の状況や組織の仕組みの調査を通して、大学組織であることを前提に、各大学組織の特性を把握し、そこに潜む問題点(リスク)を洗い出すことにより、大学組織自らが是正活動を行い、組織を発展させていくことを促すために存在する。すなわち実施した事業を対象に実施されると考えられているが、内部統制等組織体制を調査し、そこに潜む問題点を洗い出すこともあれば、事後監査から組織の隘路が表面化することもある。これらは予防保全的なアプローチである。しかし、これらを理解している大学法人は多くはない。これは監査が上述した理由にほかならないことと明確な概念形成が行われていないことに他ならない。このため大学監査に関する概念形成に関する研究を一層進め、その概念を確立させるとともに、これに基づいて監査手法を確立させ、各大学への啓蒙普及させていく。

このため大学監査の機能を1.大学経営監査、2.大学財務監査、3.教学監査、4.業務監査の四機能に分類し、これらの概念及び手法の確立を継続して行うとともに、当協会が策定してきた各種研究結果を体系的観点から見直す。このため、統括・調整する組織として企画委員会を中心に、大学監査の現状を把握するとともに、大学監査の概念・哲学並びに監査手法等の大学監査体系と実務的手法の確立のための分科会を設置し、概ね2年計画で活動を行う。なお、分科会は、従来5つの分科会に分かれていたが、過去2年間、企画委員会と合同で開催するケースが多かったガバナンス分科会を企画委員会に統合することとし、今後は、4分科会で進めることとする。このほか、調査研究機能を生かして大学監査の視点から大学価値向上に向けた提言等を行う。

1.大学監査の機能

1-1 大学経営監査機能

(1)大学法人に求められるガバナンス機能・内部統制機能のあり方、マネジメントシステム評価視点についてリスク認識とコントロール等をベースに各専門の分科会において検討していく必要がある。このため大学法人における監事監査・内部監査に関するツール(基準、マニュアル、計画、調書、チェックリスト)の開発・改良と実用化を図る方策を研究する。
(2) ガバナンス機能は、本来、設置者である経営者や組織の責任者が具備しなければならない資質を含むものである。一方で、監査機能は、経営者の特性を把握し、その特性を補完・育成する仕組みを組織の中に構築できているかを確認する機能をも含むものである。これらの要素を明らかにするための研究を行う。
(3)内部統制機能は、経営者が組織目的達成のために組織を円滑に機能させるために組織内に設ける仕組みである。内部統制の真の意味と役割を明確にし、機能させるための視点と監査視点について研究する。
(4)法令改正、大学ガバナンスコード制定等、大学法人を取り巻く環境変化への対応は、大学法人にとって喫緊の課題である。これらの諸点に関する経営者の認識について経営者・大学運営者への意識付け等が求められることから、大学法人の運営の質向上の観点からその対応に関するありようについて研究する。
(5)これらは、大学そのものが持つ特性と各大学が持つ特性を踏まえたものである必要があり、その類型化に関する研究を行う。

1-2 大学財務監査機能

監事による財産の状況監査及び計算書類の作成プロセスに関する理事の業務執行に関する監査、会計監査人による大学法人の財務諸表(計算書類)の信頼性に関する監査、内部監査に大別される大学監査のうち財産監査の充実向上は、これからの大学に求められる戦略的経営にとって、信頼性監査を超えた手法が必要とされることでもある。
これは大学法人の性格・種別にかかわらず、そこで求められている会計基準をもとに、リスクをコントロールしながら各大学法人がこれらを十分活用していくことが求められていることを意味する。そこで、大学の健全な発展のために必要とされる財務監査機能のあるべき姿について研究を推進する必要がある。

1-3 教学監査機能

教学監査は、教学部門を対象とした教学ガバナンスと内部質保証マネジメントを含む教学マネジメントシステムに関する評価である。これらの監査対象は、いずれも教育研究を取り巻く組織であるが、教育研究の内容ではなくガバナンスであり、マネジメントシステムである。教学監査は、大学そのものが持つ特性と大学個々が持つ特性を踏まえる必要があることから、その類型化に関する研究を行う。
多岐にわたる大学法人の業務のうち、その主たる業務である教学業務をサブマネジメントシステムの単位に分割して体系化を行い、各マネジメントシステム単位でシステムの評価=監査ができるようにする必要がある。また、内部質保証マネジメントシステムに関する監査については、大学法人組織全体のシステムとしてとらえ、マネジメントシステムとしての評価の必要がある。また、自己点検評価・第三者評価に関する対応状況についても教学監査の一環としてとらえる必要があり、このための研究を行う。

1-4 業務監査機能

大学法人における業務は、設置大学の教学業務が主たる事業のように見えるが、教学業務以外にも様々な業務が存在する。これらの業務を信頼性・有効性・効率性・経済性・倫理性の視点からリスク対応・業務システムと内部統制機能の組み込み状況等について評価していく必要がある。このための監査視点・監査手法等について調査研究を行い、経営に資する監査手法の確立を目指すための研究を行う。

2.委員会・分科会

上記機能を発揮させ、大学監査体系としてとりまとめるため、以下の委員会・分科会を設置する。

2-1 企画委員会

(1)法改正への対応
当協会の事業運営のあり方並びに大学監査機能の基本的考え方の改定等を協議し、その結果を理事会に指示する。
(2)各種委員会の検討内容の方向性について経営ガバナンスにそった調整を行うとともに、各研究会議及び研究会における企画内容についても検討を行う。また、大学監査が抱える課題に対応するため、必要に応じて加盟校の実態を調査する。
(3)これまで本協会が策定してきた、監事監査基準、内部統制基準、内部監査基準、教学監査基準並びそれら基準にかかわるマニュアル、チェックリスト等の見直すとともに、その普及を促進する。
(4)大学を取り巻く各種法令と経営ガバナンス・教学ガバナンス上の関係性についての調査研究を行うとともに、経営層や組織のリーダーが具備すべき資質についての研究を行い、その個性要素を明らかにする。
(5)監査効率並びに監査品質の向上を目的に、会計監査人・監事・内部監査人が連携する三様監査のあり方、制度上の問題点等について検討する。
(6)大学を取り巻く環境変化とリスク、各種法令と経営ガバナンス・教学ガバナンス上の関係性についての研究を行う。
(7)次年度の事業計画案を策定する。

上記計画は、内容により年次計画を作成して進める。

2-2 内部統制分科会

(1) 円滑に組織目的を達成するため組織に組み込まれる内部統制機能は、大学法人のトップの責任であるが、必ずしもその役割・必要性等が教職員にまで充分に理解されているとは言えない状況にある。そこで、監事・内部監査人を通して内部統制の概念が経営者を含む大学法人全体へ浸透するよう、内部統制基準の基本的考え方並びに今年度見直しを行った内部統制監査チェックリストの普及について検討する。
(2)大学法人が自らの価値を向上させ、社会へ貢献していくためには、大学法人は、大学間並びに社会での自らのポジショニングを的確に把握していくことが、適切な経営意思決定につながる。このため組織に必要不可欠なIR(Institutional Research)機能とリスクマネジメント機能とこれらの体制を支えるためのマネジメントシステムには、信頼度の高い内部統制システムの構築が必要であることから、これらシステム構築と監査視点に関する研究を進め、監査実務へ直結するチェックリストを策定する。

2-3 内部監査分科会

(1)大学監査担当者の技術並びに内部監査の有効性向上をめざし、大学の内部監査の枠組みの深化を通して、内部監査人の能力向上のためのプログラム改善・進化を図るとともにその普及活動を行う。
(2)内部監査は、大学法人及び大学組織の業務をその外側から客観的な視点で確認する行為である。このため内部監査人に求められる監査知識・スキルの普及活動を行う。

2-4 教学監査分科会

(1)教学監査は、大学法人が設置した大学の管理運営状況を監査する実務体系である。このため教学ガバナンス・教学マネジメントシステム、教学部門における内部統制の構築状況について監査を行うために策定した教学監査チェックリストの見直しを行うとともにその普及を促進する。
(2)内部質保証マネジメントシステムに関する監査については、マネジメントシステム監査の視点からその評価基準等の確立と普及に努める。

Ⅱ.大学監査手法の実務への適用と研修機能の充実

大学監査の一層の充実を目的に、①企画委員会・分科会での最新の研究成果の公表と意見聴取の場、②監査基準・監査手法の普及、③大学を取り巻く社会環境変化に関わる課題、④内部監査人・監事が承知しておくべき監査課題事項、⑤教育関係法令・行政関連事項の情報提供・問題提起の場として主として会員校の監事、内部監査人、理事・管理者、会計監査人等を対象として研究会議を開催している。来年度は、開催方式を多様化させたうえで以下のとおり開催する。

1.監査課題研究会議

(1)大学を取り巻く様々な諸課題と大学運営に関する情報提供
大学は、学校関係法令以外にも様々な法令等と関連している。また、社会の大きな変化についても把握しておく必要がある。これら大学運営に影響する様々な諸課題について大学は機敏に対応していかなくてはならないが、監査人もこれらの諸課題の本質的な把握と問題意識を高められるよう問題提起を行う。このための研究会議を随時開催する。

(2)企画委員会・分科会での最新研究成果の公表と意見聴取
監査に関する基本的考え方は、会計監査を中心とした視点が中心となっている。一方、近年、監査に関する概念は、企業においても大きく変わりつつある。当協会では、大学監査に関する概念を既存の考え方にとらわれずその概念形成・監査基準等の策定を進めているが、その最新の研究成果を公表し、大学現場の意見を聴取する場として研究会議を開催する。

(3)監査基準・監査課題事項に関する情報提供
大学監査機能の中心となる経営部門の意思決定プロセスから学務を含む学校法人業務全般を監査対象とする監査機能である。監事・内部監査人がその課せられた責任を十分果たすことが求められる。このため監事・内部監査人を対象に、監査の方法論ならびに実務上の隘路・問題点等、監査業務に関する必要な知識の修得、会計監査人と監事・内部監査人との連携、多様な監査体験の共有、あわせて監事相互の情報・意見の交流を目的として開催する。

(4)ガバナンス・マネジメントに関する情報提供
大学が有効に機能するためには、その前提として大学法人経営のあり方(ガバナンスのあり方、マネジメントシステムの構築その他)が問われる。本会議は、大学法人の経営を担う責任者を対象に、大学の経営体質の改善を目的として、大学法人の組織と監査機能を十全に果たすための人と組織等のあり方を大学経営ガバナンス・大学運営ガバナンス・リスクマネジメントの視点から討議し、ユニバーシティ・ガバナンスの強化に資することを目的として開催する。

2.教学監査研究会議

本研究会議は、大学における内部質保証ならびに教育研究を取り巻く周辺業務の信頼性向上のため、教学監査の概念と実務の正しい理解をコンセプトに、本研究会議では、教学監査分科会の研究成果に基づき、教学監査の意味と目的を検討し、現在策定している教学業務監査基準並びに内部質保証マネジメントシステムに関する監査の基準並びに手法をさらに発展・深化・普及させるため研究会議を開催する。

3.内部監査研究会議

本研究会議は、内部監査担当者並びに監事スタッフを対象に、①内部監査担当者に求められる資質の醸成、②内部監査の理論及び手法の体系的教育、③内部監査実務への展開方法、④内部監査人として承知しておくべき重要課題の把握等について知識・スキルの高度化を目的に開催する。併せて、本協会が作成した内部監査基準、チェックリスト等大学の内部監査の枠組みについての普及をめざし、個々の内部監査担当者等の知識・スキルの底上げも図る。このほか、内部監査人に求められる監査知識と手法を基礎から身につけるプログラムの充実を図るとともに、「コンサルティングレビュー」機能を有する内部監査を進めるための役割を果たせる人材の育成をめざし、内部監査・専門知識と監査遂行のための方法論の修得を踏まえた、一定のカリキュラム体系に基づくプログラムを組む。

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